預貯金使い込みを取り返すための資料としてどのようなものが考えられるか。
預貯金が使い込まれていると分かった場合にすべきことは、「預貯金等の使い込みが見つかったら」で説明した通りです。そして、使い込まれた預貯金を取り戻すためには裏付け資料が必要となります。どのようなものを用意すべきでしょうか。まず取り戻す方法として、民事では①不当利得返還請求と②損害賠償請求がありますが、どちらの方法でも必要な資料はほぼ同じです。ここでは、不当利息返還請求(②)で説明します。
(1)お金(財産)が動いたことがわかるもの
「使い込まれている」ことがわかるものが必要になります。具体的には、いつ・誰に(どこに)・いくら動いたかがわかる必要があります。
例えば、以下のものが考えられます。
- 銀行の預貯金通帳、入出金履歴
これらの資料で勝手にお金が引き出されていることや知らない相手に送金されていたりすることがわかります。引き出されたお金や送金されたお金が、損失(損害)となります。
これらの場合、引き出された(使われた)ことがわかる通帳(取引履歴)で生じた損失を証明できます。それに加え、さらに誰かの口座への送金がされているならば、送金された側が利益(利得)を得ていることが証明できます。
- 送金・振込明細書、ATM利用明細
1. 同様に、送金(振込)によって、引き出されていること(損失)と送金されて利益を得ていること(利得)を証明できます。
- 防犯カメラ映像
勝手に通帳・キャッシュカード・印鑑類が持ち出されたことを証明できます。
(2)加害者に利用権限がなかったことに関するもの
権限(預けていた、貸していたなど)がないことの証明は難しいです。本来は、使い込みが疑われた側で権限を立証する必要があります。それを使い込みされた側で証明するのは、「ないこと」を証明することになるので難しいのです。ただ、使い込みを疑う以上は、相手に使い込む権限がなかったことは確認しておきたいところです。確認するための資料としては、以下のものが考えられます。
- 権限根拠となる書類(権限書面、契約書)がないこと
引き出し等を任せていた、管理を任せていた、契約(消費貸借、預け、贈与など)があるといったものが権限があることの証拠となる例です。ですので、これらの契約書とか権限を授与するような書類があると相手の権限があることが逆に疑われます。使い込みを疑う場合には、このようなものが「ない」ことを確認しておきたいところです。
ただ、権限がある場合でもこれだけ大きな額の取引までは許していないという場合(権限を越えている)もありますのでよく事情を確認する必要があります。
- 録音音源・防犯カメラ映像
勝手に持ち出していたことがわかる録音や映像などがあると持ち出しを裏付けることができます。
- 認知症などの場合
また、本人が認知症などで成年後見を利用する程度の判断能力しかない場合などには、権限を与えているということ自体が判断能力のない者が行ったものであり、使った権限自体の根拠がないということになります。
(3)使い込みの証拠
使い込まれたということの証拠としては、例えば
- 勝手に使い込み金で購入したものに関する領収書(レシート)、クレジット利用明細
- 勝手に送金した送金先の口座情報(送金記録―取引明細、ATM利用票等)
が考えられます。
(4)第三者の使い込みの裏付け証言
(1)から(3)のような客観的証拠以外には、使い込みを近くで見ていた第三者(家族,介護者)などがいれば、その方の証言を取れておくとよいです。最終的には「陳述書」のような形でまとめられるといですが、そこまではできないならば、供述についての録音をとっておけるとよいと思います。
ここであげたものは、一例ですので使い込みの事情によって必要となる資料(証拠)も変わってきます。詳細については一度ご相談ください。
さらに詳しいご相談の場合は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
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