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介護保険法上の行政「調査」― 実地指導?検査?監査?

行政調査に関してはいろいろなケースがありますが、相談が最近多いものが介護保険法に基づく行政調査の案件です。もしご相談いただけるのであれば、本来であれば、①調査段階からしてもらう、または(将来的に調査を受け得る事業をしていることを踏まえて)②定期的にチエックさせてもらうようにしておけることがベストです。しかし実際はそうなっていないことがしばしばです。不利益処分(指定取消など)のための聴聞手続になってから、もしくは、取消しがされそうになった段階でご相談にいらっしゃることが大半です。ただ、問題となりうる場合の対応は「早ければ早い方がよい」のです。
「行政調査」と言われると、調査をされるということだけでいかにも自分たちが悪いことをしているがために調査を受けることとなってしまったように感じてしまうものです。しかし、介護保険法上に関する限り、刑事事件におけるような強制捜査(調査)をすることは認められていません。つまり、役所の人が自分たちの事務所に来て、勝手にパソコンを開いてデータを見ることは、法律上認められていないのです。これは大前提です。
しかしながら、介護事業者の方は、行政調査に入られるというだけで戸惑ってしまいます。ただ、介護保険における行政調査には2種類の調査があり、それぞれに対応が違うことを理解しておく必要があります。つまり、介護保険法23条による任意の調査と76条、78条の7第1項などによる調査(検査・監査)の場合があります。前者は、「実地指導」と言われたりもします。大きな違いは、23条の調査はあくまで任意のものなのです。ですから役所の人から言われて事務所への立ち入り検査に応じなければいけないわけではないし、質問への回答をしないこともできるのです。それが「任意」の調査なのです。
対して、後者の調査は意味合いが異なってきます。これらの調査の場合は、「サービス費の支給に関して必要があると認められるとき」に限って行われる調査です。そして、虚偽の報告をしたり、資料の提出や調査を拒否したりした場合は、指定取り消しを受けることもあり得ます(77条、78条の10)。ですので、この調査は拒否等すると不利益を受け得るという意味で間接強制的な行政調査なのです。では介護保険事業者にとって、なぜ指定取消を恐れるのでしょうか。介護事業者として介護事業を行う上で、介護保険事業者として指定を受け、介護保険からサービス費の支払を受けることが経営上重要だからです。ただし、この調査においても事業者側による対応を待つものであり、事業者が拒否しているにもかかわらず役所の人が勝手に事業所に立ち入ったり、データを意思に反してみたりすることは許されていません。
調査対象として通知を受けた事業者におかれては、自分の受けることとなる「行政調査」がどのような意味合いのものであるかを十分に理解し、適切な対応を取ることが必要だと思われます。事業者におかれては、定期的に法令が遵守されているか点検をしていただき、調査(監査)段階から弁護士などのサポートを受けておくことがお勧めするとともに、特に行政調査に対応できる弁護士等を常に相談できるようにしておくことをお勧めします。


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