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遺産分割と税額の関係

遺産分割と税額の関係について

相続が開始すると相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継することになります(民法899条)。そして、相続財産は、各共同相続人の共有となります(民法898条)。この前提を元に「相続税の申告期限と遺産分割」「相続税のことを考えた、遺産分割合意」について解説していきたいと思います。

(1)相続税の申告期限と遺産分割
民法上の原則では、「相続分に応じて承継」や「共有」となりますが、具体的に各相続人に財産・債務を帰属させるのは遺産分割です。遺産分割は話合い(協議)、家庭裁判所での話し合い(調停)、家庭裁判所による審判によって行われます。遺産分割は、その時期については原則として制限はありません(民法907条1項)。
しかし、よく「遺産分割を急いでしなくてはいけない」と相続人の間で話題になることがありますが、それはなぜでしょうか?
それは相続税の申告と納税については期限があるからです。相続税法では、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に申告をしなければならないと規定しています(相続税法27条1項)。「急いで」というのは、相続税申告の期限があるからです。ただ、必ずしも遺産分割の合意が10ヵ月以内にされるとは限りません。相続分の争い、具体的な帰属・処分方法についての争い、寄与分、特別受益の主張などで遺産分割までに数年かかるものはざらにあります。では、そのような場合はどのように扱われるのでしょうか?
当然、民法上の帰属は、先の原則になります(権利義務を相続分に応じて承継、相続財産を共有)。問題は相続税です。「遺産分割ができていない」という理由での相続税の申告の延長は認められていません。ですので、各相続人が法定相続分を取得したものとして相続税を計算し、申告期限内に申告や納税を行うのです(相続税法55条)。ですので、相続税の申告に際して認められる、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の特例といった相続税法で認められる特例は具体的な遺産分割がされていない以上認められません。ただ、遺産分割時に特例適用が受けられるような状態になる場合に備え、税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があるのです。そして、具体的な遺産分割ができた場合に改めて修正申告をし、払いすぎている場合には還付・不足している場合には追加納付を行うこととなります。

(2)相続開始前に相続税のことを考えて、遺産分割合意をしておくことはできるか?
では、死亡を知った日から10ヵ月という期間ではとても分割ができないから被相続人となることが予定されている人の生前の早い段階で遺産分割をして具体的に決めておくというのはどうでしょうか?
これは、生前、つまり相続開始前に遺産分割をしておくことになりますが、相続開始前の遺産分割については無効とされています。そもそも相続が発生していない段階で遺産の分割をするということは論理的にありえないから無効なのです。一般的に考えても、まだ生きているのに死んだ後のことを話すのは非常識ですよね。ただ、実際には相続税負担のことを考えて早い段階で調べておくことはあるようです。「税に詳しい相続人予定者に言いくるめられて、自分に不利な内容の遺産分割をすることになりそうだがどうしたらよいか?」という相談を受けることもありますが、これは心配いりません。相続前の遺産分割は無効なのです。ですから「生前に合意したじゃないか」と言われても、そもそも無効だと主張すればよいのです。ただし、無効な遺産分割ですが、相続開始後に各相続人が追認した場合には有効とできるという裁判所の裁判例があります。追認しない限りは、相続開始前に話した遺産分割合意は無効といえるのです。
結局、相続開始前(生前)に相続税のことを考えて、軽減措置などいろいろ調べておくことはできますが、具体的な配分や相続資産は相続開始するまでは確定しないのです。

当事務所にも相続に関する様々なお悩みやご相談をいただいております。
高齢化社会を迎え、相続・遺言に関しては誰もが抱えるお悩みだからこそ、まずはご相談いただいて様々なお悩みに対して一緒に最善の解決方法を考えていきたいと思います。


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